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坂本龍馬進化論

菊池明著

前回、「竜馬がゆく」で司馬遼太郎ファンになったと書いたが、10代前半の多感な時期でもあり、当然のように坂本龍馬にもハマった。今も我が家の書棚の二列程は龍馬関係のライブラリーで埋め尽くされている。
この本はそれらの中でも比較的最近のもので、龍馬伝の嚆矢である坂崎紫瀾著「汗血千里駒」から、龍馬研究の大家・平尾道雄氏の「坂本龍馬海援隊始末」まで、時代の異なる6つの代表的な伝記を横並びで考察。「薩長連合」「船中八策」他テーマ毎に、龍馬の歴史的役割や事実関係がどう描かれ、歴史の中で定着していったかを考証的に論じた労作である。

「それでも佐那は龍馬を待っていた。心の支えとなったのは、坂本家の桔梗紋が染められた龍馬の着物である。~(中略)~佐那は『これは坂本さんに贈るために染めましたが、国事に奔走し道場へもあまり来なくなり、私が切り取り、形見として持っています』と、笑みを浮かべながら見せたという。」(第2章/千葉道場入門より)

このシーン、「竜馬がゆく」ではこう描かれている。

「あの、・・・」
さな子は何かいいかけたが、竜馬はそれを言わさないために、自分の紋服の左袖をべりべりと引きちぎった。
「なにをなさるのです」
「わしは何ももっておらぬ。これを貰うてくれ」(狂瀾編/片袖より)

事実はどうあれ、この先永遠に語り継がれるのは、片袖を形見に引きちぎった龍馬の姿なのだろう。結局大半の日本人が抱く龍馬像は、司馬さんによってイメージづけられたものだから。ならばいっそのこと、「竜馬がゆく」も含めて論じてほしかったぜよ。

[2003年5月26日] この日の感想・書評へ→

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