魯山人の食卓
北大路魯山人
「どじょうなべの要点はだしで、表側の卵を汚さぬ工夫、だしを笹がきごぼうの下にだぶだぶ残さない工夫、卵を笹がきの中まで沈めない工夫、この三つができたら本格である。」(「一癖あるどじょう」より)
前回の東京出張時に、午前中から午後にかけてぽっかり時間が空いた。浅草に宿を取っていたので、松屋で「古本市」をひやかし、浅草寺や仲見世界隈をぶらぶらした後、有名な「駒形どぜう」に初めて行った。
どじょうはこの時期が旬、店の前に「どぜうの季節」ののぼりがはためく。中に入ると、小振りな寺の御堂を思わせる木造一間の渋い空間。整然と並んだ座布団の上に胡座をかいて小鍋を食するスタイルである。案内されたのは年配の紳士の隣。独り旨そうにビールグラスを傾け、熱々のどぜう鍋をつついている。一瞬迷ったが、約束までにまだ3時間程ヒマがあったので、常温の本醸造(伏見「ふり袖」)一合と「柳川定食」を注文した。田楽付き。どじょうは思ったより上品で、卵と笹がきごぼうとの調和は絶妙だ。濃厚な白味噌仕立てのどじょう汁が、仕上げの御飯と香の物を引き立てる。
一合程度の酒では決して酔わないが、情緒ある時空間に浸り、気分だけはほろ酔い加減・・・。
「どじょうなべ。美味くて、安くて、栄養価があって、親しみがあり、家庭でも容易にでき、万事文句なしのもの。ただし、貴族的ではない。」(同上)



白岳仙(福井)
純米吟醸奥越五百万石
720ml/1380円
今年度から、同じ福井県内の黒龍にいた杜氏の新谷修氏が造りに加わったことで、酒好きの間で俄然注目を浴びている銘柄。
華やかさとは少し違う、独特のクセのある甘い香り。口に含むと薫製のような味わいが広がり、ほのかに余韻を引く。ただその香りの割には飲み口はすっきりした辛口。旨味も程良く乗っており、後味のキレもいいから肴なしでも飲めてしまう。個性的でありながら意外に飲みやすい酒。
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