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ドリンキング・ライフ

ピート・ハミル著/高見浩訳

「酒は内気な人間に自信を、迷っている人間に明晰さを、傷ついた孤独な人間に慰藉を、そしてとりわけ、愛と友情とつかみどころのない希望を人々に与える。ほとんど物心がつくかつかないうちから、酒は私の人生の一部だった。」(「はじめに」より)

酒の飲み方を知ったのは社会人一年目。私にコピーの基本を教えて下さった当時の上司のおかげである。高度成長期の輝きを知る旧き良き時代の広告マン。遊びの達人だった。新地のクラブ、老舗のショットバー、ビアホール、割烹、蕎麦屋、ガード下の立呑etc.。毎晩のように、ありとあらゆる酒場の扉を開いてくれた。背筋を伸ばし、深酒はせず、足元が危うくなりそうな時は「スマン、お先に」と、さりげなく勘定を済ませ一人席を立つ。きれいな飲み方を背中で教えてくれた。

ある冬の夜、新地で飲んだ帰りのこと。信号を渡ろうとしてその人は、膝から崩れるようにころんだ。「いやあ、面目ない」と照れ笑いをしていたが、その時既にガンに冒されていたんだと私が知ったのは、それから2ヶ月後だった。その人と一緒に興した会社、描いた夢は、やがてあっけなく消え去った。
あれから17年。あと5年で、私はその人と同じ年齢を重ねることになる。

「そこはさながらジョン・スローンの絵のように淡い琥珀色の光に包まれていた。長いカウンター。シャッフルボード・マシーン。ジュークボックス。窓際に置かれたテレビ。そしてテーブルが一つ。カウンターの背後では、さまざまなボトルが輝いていた。同じ棚の中央にはキャッシュ・レジスターが鎮座しており、一方の端にはホットドッグをつくるためのトースター、もう一方の端にはミス・ラインゴールドの広告が置かれていた。あの最初の晩、バーは満員で、暖かく、タバコの煙がたちこめていた。窓は蒸気でくもっていた。」(「自立」より)

*ピート・ハミルのその他の本
「ブルックリン物語」

[2003年10月22日] この日の感想・書評へ→

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