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ヘミングウェイ全短編1 われらの時代 男だけの世界

アーネスト・ヘミングウェイ著/高見浩訳

頭上のメインスタンドでは、大歓声があがっていた。マエラは周囲のすべてがどんどん大きくなるのを感じた。次いで、すべてがどんどん小さくなり、また大きく、大きく、大きくなってから、またどんどん小さくなった。そのうち、すべての動きが映画のフィルムの早まわしのように早くなった。そして、彼は死んだ。(「われらの時代・第十四章」より)

20代前半の頃、アメリカ文学やハードボイルド小説にはまった時期に読んで以来久々のヘミングウェイ。といっても短編と長編を各二冊程読んだだけで、特に熱心な読者でもなかったので、枕詞のように触れられる「文学に革命を起こした独自の文体云々」についても、正直なところよく知らない。難しい事は脇に置いて、感情表現が最小限そぎ落とされたその心地よいリズムを、読み手としてただ楽しむだけである。
あとは、ごく稀にTVなどで闘牛のシーンを見た時、バーで好きなダイキリを注文する時に、ふとその名が頭をよぎるくらいか(但し彼のお好みは、正確にはフローズンタイプらしいが)。

「おれは持ちこたえられるぜ」ジャックは言った。「あんなウスノロに倒されたくねえや」 試合は彼の予想通りに展開していた。ウォルコットは倒せない、と彼は見抜いていたのだ。スタミナも切れつつあった。でも、彼は満足していた。金も確保できるだろう。あとは自分で満足のいくような決着をつけるだけだ。が、ノックアウトだけはくらいたくなかった。(「五万ドル」より)

[2005年3月19日] この日の感想・書評へ→

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