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Cの福音

楡周平著

喉の奥で、粘液と息がわずかに混じり合う濁った音が聞こえた。
恭介は男の腹部に深く突き刺さったナイフのグリップをあらためて握り直すと、それを時計まわりに、刃が九時の方向を向くまで捻った。
まるで蛙を踏み潰したかのような肉と血が入り交じった音を腹の底から発すると、男はその場に崩れ落ち、動かなくなった。(第2章「CADETー息子」より)

古本屋の100円コーナーで見かけて、前々から何となく評判の良さを耳にしていたので購入した。冷静沈着な悪のヒーローが主役ということで、勝手に高い期待を持って読み始めたのだが、手の込んだコカインの密輸方法に「まあ、よく考えたもんだ・・・」と感じた以外は、特に見るべきものはなし。微妙にイケてないレトリックと心理描写、悪党のくせに妙に好青年っぽい主人公の台詞回しが、読んでて違和感を感じた。小説的技巧は無しにして、ストーリー展開だけで読者をぐいぐい引っ張ってくれた方が潔かったかも。
第二作以降も100円コーナーで売られていたが、何となく食指は進まず。まあ今の若い世代の読者にとっては、ハードボイルドの文章に格調など求めないのだろうなあ。

黒いシルエットはすべて消え、それに代わって五つの黒い物体が床に転がっているのが分かった。恭介は周囲を窺った。この男たちの仲間がまだ闇の中に潜んでいるかも知れないと思ったからである。
気配はなかった。
運河の水面に消えてゆく雨の音だけが、静かに恭介を包んだ。(第8章「COMBATー戦闘」より)

[2005年3月 2日] この日の感想・書評へ→

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