ジャック・リッチー
彼は落ち着かない様子だった。「ポーラは見つかりそうですか?」 わたしは肩をすくめた。「最善を尽くすのみです」 彼は勧められた椅子に腰かけた。「父がポーラを見つけるためにいくら支払っているかは知りません。でも、ぼくは喜んでその二倍進呈します−−かりに彼女を見つけないでいてくれたら」(「誰も教えてくれない」より)
仕事の合間やちょっとした息抜きとして読むのに、短編集は都合が良い。起承転結の展開が早く、物語が終わる毎に確実に区切りが付けられるので、自分のペースで読んだり止めたりしやすいからである。 但しジャック・リッチーに関しては、そう易々と自分を抑えられない。どの作品も謎解きの要素が絡む上、アッと言わせる結末が必ず終盤に用意されているため、読み終えた途端に「次はどんなサプライズが楽しめるのだろう」と気になって仕方がないのだ。おまけに巻末の解説にもある通り、「読んでいるあいだはひたすら愉しく面白く、読み終えた後には見事に何も残らない」(10ドルだって大金だ)から、軽やかな読後感に包まれながら次々と読み進めてしまう。無駄を削り取った切れ味の良い文体と相まって、「クライム・マシン」と併せて、まさに短編ミステリーのお手本の様な珠玉の作品集である。
ラルフとわたしは彼をそのままにして、近くの酒場に出かけた。 「ラルフ、世の中は機械に乗っ取られつつある。もはや理性や想像力を働かせる余地はないんだね」 「気にするなよ、ヘンリー」ラルフが言った。「なんにする?」 「シェリーをグラスで、ダブルにしてくれ」 バーテンダーは十分かかって、ようやくシェリーのボトルを探しだした。(「可能性の問題」より)
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10ドルだって大金だ・ダイヤルAを回せ
ジャック・リッチー
仕事の合間やちょっとした息抜きとして読むのに、短編集は都合が良い。起承転結の展開が早く、物語が終わる毎に確実に区切りが付けられるので、自分のペースで読んだり止めたりしやすいからである。
但しジャック・リッチーに関しては、そう易々と自分を抑えられない。どの作品も謎解きの要素が絡む上、アッと言わせる結末が必ず終盤に用意されているため、読み終えた途端に「次はどんなサプライズが楽しめるのだろう」と気になって仕方がないのだ。おまけに巻末の解説にもある通り、「読んでいるあいだはひたすら愉しく面白く、読み終えた後には見事に何も残らない」(10ドルだって大金だ)から、軽やかな読後感に包まれながら次々と読み進めてしまう。無駄を削り取った切れ味の良い文体と相まって、「クライム・マシン」と併せて、まさに短編ミステリーのお手本の様な珠玉の作品集である。
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