デーヴ・グロスマン著/安原和見訳
殺された兵士は苦しみも痛みもそれきりだが、殺したほうはそうはいかない。自分が手にかけた相手の記憶を抱えて生き、死なねばならない。教訓はいよいよはっきりしてくる。戦争の実態はまさしく殺人であり、戦闘での殺人は、まさにその本質によって、苦痛と罪悪感という深い傷をもたらす。(第11章「殺人の重圧」より)
生命が危険に晒されている極限状況にあっても、いかに人が人を「殺したくない」ものなのか。そしてその「殺したくない」心理を克服するため、軍隊が兵士達にどの様な訓練を施しているのかを,元米軍将校で心理学者の著者が多くの事例を元に解説している。 戦場での最大の心理的苦痛は「殺される」恐怖だと,我々一般人は想像しがちである。だが多くの研究成果によると、戦場で実際に兵士を苛むのは「人を殺す」ことへの抵抗感と,殺した後に湧き出る自責の念である。人は殺し屋として生まれた訳ではないからだ。 そこで米軍はオペラント条件づけの手法を用い、「反射的」に他者を撃てる様兵士を訓練し、ベトナム戦争での兵士の発砲率は大幅に向上した。しかしそれは、「人を殺した」心理的重荷を背負う兵士の数を増やす結果ともなった。本書の後半ではベトナム帰還兵の問題に紙数が割かれ、「人を殺した」兵士を社会がどう受容すべきかが考察されている。また最後には近頃のバイオレンス色の強い映画やゲームが、「人殺し」に慣れる心理的訓練を知らず知らず青少年達に施しているのではと警鐘を鳴らしている。 今年読んだ中で最も読み応えのあった一冊。
本書で私が訴えたかったのは、人間のうちには、自分自身の生命を危険にさらしても人を殺すことに抵抗しようとする力がある、ということだ。歴史に残るかぎりの昔から、その力はずっと人間のうちにあった。戦場でより効果的に敵を殺すことを目的に、社会がその構成員に殺人への抵抗を克服させようと努力してきた歴史、軍事史はそのように解釈することも可能である。(第41章「アメリカでの再感作」より)
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戦争における「人殺し」の心理学
デーヴ・グロスマン著/安原和見訳
生命が危険に晒されている極限状況にあっても、いかに人が人を「殺したくない」ものなのか。そしてその「殺したくない」心理を克服するため、軍隊が兵士達にどの様な訓練を施しているのかを,元米軍将校で心理学者の著者が多くの事例を元に解説している。
戦場での最大の心理的苦痛は「殺される」恐怖だと,我々一般人は想像しがちである。だが多くの研究成果によると、戦場で実際に兵士を苛むのは「人を殺す」ことへの抵抗感と,殺した後に湧き出る自責の念である。人は殺し屋として生まれた訳ではないからだ。
そこで米軍はオペラント条件づけの手法を用い、「反射的」に他者を撃てる様兵士を訓練し、ベトナム戦争での兵士の発砲率は大幅に向上した。しかしそれは、「人を殺した」心理的重荷を背負う兵士の数を増やす結果ともなった。本書の後半ではベトナム帰還兵の問題に紙数が割かれ、「人を殺した」兵士を社会がどう受容すべきかが考察されている。また最後には近頃のバイオレンス色の強い映画やゲームが、「人殺し」に慣れる心理的訓練を知らず知らず青少年達に施しているのではと警鐘を鳴らしている。
今年読んだ中で最も読み応えのあった一冊。
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