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四番、ピッチャー、背番号1

甲子園9ストーリーズ
横尾弘一

審判員をしていて一番ホッとするのは、何事もなく無事に試合が終わった時だと、秋村は言葉を続けた。試合を管理、運営するのが役割だから、そんなふうに考えてしまうのだ、と。
「僕の野球人生は、一〇年前にすっかり終わった。今は、野球人生の延長ではなく、大好きな野球のそばにはいますが、まったく違う仕事、人生を歩んでいると思います。その仕事をしっかりとやっていくだけです」(秋村謙宏 1983年・夏/宇部商「プラチナシートの『プレイボール!』」より)

かつて甲子園で“四番エース”としてスタンドを湧かせた元球児9人に取材し、それぞれの半生を描いたノンフィクションストーリー。著者自身が立教大で白球を追い続けていたこともあってか、元球児達に向けられる眼差しはとても温かく、読んでいて心地良い。
9人の中には、プロ野球や社会人、高校野球の世界に身を置き続ける者もいれば、営業マン、カメラマン、理容師など別の本業を持ちながら野球と関わり続ける者もいる。生き様は九人九色だが、共通しているのが「四番、ピッチャー、背番号1」を何らかの形で心の支えとしながら、その後の人生を歩んでいること。そして、当時の経験から何かを学び取ろうという気持ちを真摯に持ち続けていることだ。
さて、度重なる故障で不完全燃焼のまま高校野球を卒業した息子が、春から晴れて大学野球で“四番エース”を目指すことになった。親父としては唯々ケガなく、充実した四年間を過ごしてほしいと願うのみ。

優秀と言われる投手は、打者の呼吸を外すのが上手い。投球フォームや間の取り方、さらに多彩な球種を駆使することで、スイングしてきた打者の呼吸を一瞬外せば凡打に討ち取れる確率が高くなる。反対に、プロ野球でも滅多打ちされている場面の投手は、精神的な重圧から我を忘れ、打者の呼吸で投げているのが大きな原因なのだ。 その呼吸の取り方を身につけている藤岡は、投手であった時と反対に、被写体となる選手に呼吸を合わせていく。そして、「その選手が最も輝いているシーン」を踏まえ、独特の距離感でフレーミングを決める。(藤岡雅樹 1986年夏/松山商「被写体までの距離」より)

[2010年2月23日] この日の感想・書評へ→

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