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どちらかが彼女を殺した

東野圭吾

突き止めた後はどうするか。それについてもじつは康正はすでに決めていた。しかしまだそのことに思考を向ける段階ではないと思った。まずすべきことが山のようにある。
肝心なことは−。
警察に気づかれないことだった。特にあの加賀という刑事に、自分の狙いをかぎつけられてはならないと思った。(第二章「3」より)

「どちらかが彼女を殺した」。タイトル通り、二人の容疑者のうちどちらが真犯人か明示されないまま本書は終わる。真相追究は皆さんでどうぞ、という読み手への挑戦であり、作者は物語の中に、注意深く読めば真相に迫れるだけの材料をオープンにしている。一応巻末には、作品と独立する形で評論家・西上心太氏による「推理の手引き」が袋とじで提供されているが、ここは一丁、名刑事加賀恭一郎になったつもりで謎解きに挑戦せねばなるまい。
という訳で本文を読み終えた後、ある仮説の下に真相究明に繋がる一つの「言葉」を探して再読すること約30分。自説を裏付ける明確な「言葉」こそ見つからなかったものの、最終的に自説と袋とじの中身は同じ結論に達した。ちなみに私が探した「言葉」は単行本の発刊時には存在したが、文庫化の際に作者が削って難易度を高めたらしい。ということは単行本の時に読んでいれば、もっとすんなり謎が解けていたはずだなと、気分良く眠りに就いた次第。

佳世子は少し逡巡したようだが、最後には決心した。袋を破り、中の粉末を口に入れ、グラスの水を飲んだ。そして空き袋をそばのゴミ箱に捨てた。薔薇の模様の入った、奇麗なゴミ箱だ。
康正は、冷蔵庫の取っ手にかけてあるタオルを手に取った。(第五章「5」より)

[2010年8月30日] この日の感想・書評へ→

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