悪意
東野圭吾
だが私は正直なところ、犯人は彼ではないかと疑っている。そのきっかけとなったのは、事件当日の夜に彼が発した、なんでもない一言だ。それを聞いた瞬間から、私は彼が犯人である可能性について検討を始めた。直感によって動くのがじつは極めて非効率的であることは承知しているが、今回ばかりは、それにこだわってみたわけだ。(「疑惑の章 加賀恭一郎の記録」より)
加賀恭一郎シリーズの第4作である本書のスタイルは、「Who done it?」ではなく「Why done it?」。殺しの「動機」が主体となったミステリーである。
物語はある男の手記と、加賀刑事の捜査記録を交互に読み進む形で進行し、いつものように加賀の鋭い観察力によって、手記の男が犯人であるという事実は早々と確定される。しかし本作の読みどころはまさにそこから。実は犯人の手記の中には読み手(それは加賀であり読者でもある)に対する言葉の罠が巧妙に仕掛けられており、物語が二転三転して真相が明らかになるにつれ、「悪意」というタイトルが持つ底暗さが二重構造となって読み手を包み込む…。
99%の事実に混ぜたわずか1%のウソが、人の印象や物事の様相をがらりと変えてしまう恐さを改めて教えてくれる作品。
じつに驚くべき発想だと思います。殺人を犯す前に、まず動機を用意するなんてことは、おそらく前代未聞ではないでしょうか。私は今でこそ確信を持ってしゃべっていますが、この結論に至るまでにはずいぶんと悩んだのです。まさかそんなことはあるはずがない、という具合に。(「真実の章 加賀恭一郎による解明」より)


亀の王(新潟)
純米吟醸生貯蔵酒
720ml/1500円
約一年ぶりに呑んだ「亀の王」。幻の米「亀の尾」を掛米として仕込んだ純米吟醸で、久須美酒造を応援する「和醸良酒・酒は風の会」加盟店のみで取り扱う限定品だ。麹米には兵庫県産の山田錦を使用(55%精米)。麹蓋による丁寧な麹造りによって醸されている。控え目ながら確かに香る上立ち香とスッキリした飲み口、柔らかな味わい。夏になるとつい呑みたくなる酒の一つ。肴は旬の秋刀魚とカンパチの刺身、にぎり鮨、鰻の肝焼。
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