浅野裕一
世俗で優秀なものとは、数多くの相い矛盾した性質を、一個の身体中に同時に備えているものを指す。航空機を例に挙げると、グライダーのように翼面積を大きくすれば、航続時間は増大するが、飛行速度は低下する。逆にロケットのように翼を小さくすれば、速度は増すが、今度は航続時間が低下する。そこで、速く、しかも長く飛べるという矛盾した性能を兼備したとき、それは名機と称賛されるのである。実社会で優秀であることの難しさは、ここにある。(第八章「九変篇」より)
読むたびに新たな発見がある、それが毎回「孫子」の様々な訳本に触れた時の感想だ。本文の解釈とそこから敷衍される解説の中味には、訳者毎の視座の違いと洞察力の深浅、読解力の優劣が否応なく顕れてしまう。これは偏に「孫子」が、戦争における普遍的な基本原則を語る書物であるが故であり、だからこそ読み手の方も自分なりの哲学を持って立ち向かわないと、単に字面を追うだけの浅はかな読書体験に終わってしまう。 スポーツであれば、百戦百勝できるチーム作りこそが最大の目標となろうが、ビジネスの場では、いかに戦わずして実質的勝利を収め続けるかが究極の目標となる。一つの大きなコンペを終え、つくづくと「戦わずして勝つ」事の難しさを想う今日この頃。
軽はずみに戦争を始めて敗北すれば、滅んでしまった国家は決して再興できず、死んでいった者たちも二度と生き返らせることはできない。だから、先見の明を備える君主は、軽々しく戦争を起こさぬよう慎重な態度で臨み、国家を利する将軍は、軽率に軍を戦闘に突入させぬように自戒する。これこそが、国家を安泰にし、軍隊を保全する方法なのである。(第十三章「火攻篇」より)
[2010年9月29日] この日の感想・書評へ→
このエントリーのトラックバックURL:
[酒本舗TOP] [HOME]
Powered by Movable Type 3.17-ja
SAKE HOMPO The copyright of this chapter is reserved by Shunji Yu and freeist communications Any unauthorized reproduction of any of its content is prohibited.
孫子
浅野裕一
読むたびに新たな発見がある、それが毎回「孫子」の様々な訳本に触れた時の感想だ。本文の解釈とそこから敷衍される解説の中味には、訳者毎の視座の違いと洞察力の深浅、読解力の優劣が否応なく顕れてしまう。これは偏に「孫子」が、戦争における普遍的な基本原則を語る書物であるが故であり、だからこそ読み手の方も自分なりの哲学を持って立ち向かわないと、単に字面を追うだけの浅はかな読書体験に終わってしまう。
スポーツであれば、百戦百勝できるチーム作りこそが最大の目標となろうが、ビジネスの場では、いかに戦わずして実質的勝利を収め続けるかが究極の目標となる。一つの大きなコンペを終え、つくづくと「戦わずして勝つ」事の難しさを想う今日この頃。
[2010年9月29日] この日の感想・書評へ→
このエントリーのトラックバックURL: