幕末の快男児陸奥陽之助 津本陽
小次郎は思わず口走った。 「私もできることなら、先生のもとで航海術やらオランダ語を習いたいものです。勝先生というお方は、世に稀な賢才だと思います」 龍馬は拍手してよろこんだ。 「お前さんがそういうのを待ってたがじゃ。先生は門人を百人でも二百人でも集めてこい。俺が食わしちゃるきというて下さるがじゃ。お前さんがその気なら、明日にでも入塾できるよう頼んできちゃるきに」(「龍馬と小次郎」より)
あの坂本龍馬に「(刀を)二本差さなくても食っていけるのは、俺と陸奥だけだ」と言わしめ、不平等条約の改正等数々の事績を残した明治期の外務大臣、陸奥宗光(陽之助)の青春時代を描いた作品。神戸海軍塾の時代はもちろんのこと、後には兵庫県知事を務めるなど、神戸との縁が深い歴史上の人物である。 龍馬との出会いを機に世界へと目を開いた陸奥は、その後龍馬の片腕として神戸海軍塾、亀山社中、海援隊と行動を共にしたため、本来陸奥の物語であるにも関わらず、結果的に龍馬に喰われてしまった形だ。そして何より龍馬と永別した後、有為転変を経た末に外務大臣に就任。諸外国と堂々と渡り合う傑物へと成長していく人物像にも興味があったので、後半生の描き方が駆け足で済まされてしまったのが残念である。
小次郎は龍馬の心情がよく分かった。貿易を盛大におこない、富を手にすれば自然に国力がついてきて、大艦巨砲を手にいれることもできよう。 そうなれば、腐りきった柿のような幕府は潰れ、あたらしい指導者があらわれてくるのだ。小次郎がしきりにうなずくのを見た龍馬は、歯を見せた。 「潮に乗って、沖へ出ようじゃいか」(「神戸海軍塾」より)
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荒ぶる波濤
幕末の快男児陸奥陽之助
津本陽
あの坂本龍馬に「(刀を)二本差さなくても食っていけるのは、俺と陸奥だけだ」と言わしめ、不平等条約の改正等数々の事績を残した明治期の外務大臣、陸奥宗光(陽之助)の青春時代を描いた作品。神戸海軍塾の時代はもちろんのこと、後には兵庫県知事を務めるなど、神戸との縁が深い歴史上の人物である。
龍馬との出会いを機に世界へと目を開いた陸奥は、その後龍馬の片腕として神戸海軍塾、亀山社中、海援隊と行動を共にしたため、本来陸奥の物語であるにも関わらず、結果的に龍馬に喰われてしまった形だ。そして何より龍馬と永別した後、有為転変を経た末に外務大臣に就任。諸外国と堂々と渡り合う傑物へと成長していく人物像にも興味があったので、後半生の描き方が駆け足で済まされてしまったのが残念である。
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