日本の1/2革命
池上彰・佐藤賢一
池上 日本のほうがリーズナブルで、フランスのほうがやりすぎだった、という言い方もできるわけでしょう。日本も残り二分の一をやっていたら、大混乱になって収拾がつかなくなっていた可能性がありますよ。
佐藤 そうなんです。たとえば最後の将軍、徳川慶喜を処刑したりなんかしていたら、あるいは担ぎ出した天皇をどこかの段階で廃位してしまっていたら、だいぶ雰囲気が違ってしまったでしょうね。(第二章「『半分』だった明治維新」より)
日本史に「革命」はない。大化の「改新」や建武の「新政」、明治「維新」、GHQ「改革」はあっても、「革命」は起きなかった。最も革命のイメージに近い明治維新ですら、徳川幕藩体制から王政復古へと統治主体が一変したにも関わらず、「革命」と呼ぶには少々憚られる。その辺りの日本的な“不徹底性”を、フランス革命と対比して論じようと言うのが本書の趣旨である。対談するのは今を時めく解説上手の池上彰と、長編「フランス革命」を執筆中の直木賞作家・佐藤賢一。
日本史上の改革的な出来事は悉くフランス革命の“半分”で終焉した、というのが佐藤の持論。例えばフランス革命では王政を廃止して共和制を樹立した後、さらに王を処刑したが、明治維新では将軍は殺されずに済んだ。GHQ改革でも天皇は助命され、六十年代の安保反対デモや学生運動でも政権が覆る迄には全く至らなかった。いずれも革命と呼ぶには中途半端だ。
では民主党が政権を奪った今の日本はどうか。「どうせ何も変わらないさ」と思い続けて来た戦後の日本人にとって、「やればできる」という初めての経験であり、一種の革命に近い状況ではある。しかしいざ政権が替わったものの、既に国民の中には失望感が広がり、まさしく中途半端な状態だ。折しもその状況下で日本を襲った未曾有の大震災。世の中はどうなるのか、今の革命らしき動きが、この天変地異によって次の段階へ進むのか。本書に結論はないが、今の時勢を俯瞰する一つの視点が与えられた気はする。
池上 なるほど。とりあえず攻撃してみたら、あらら、パスティーユ落ちちゃった、どうしましょうと。
佐藤 今回の政権交代も似ていますよね。あれれ、民主党が勝っちゃった。どうしようと、そこから動きはじめた感じですよね。
池上 さきほど、日本人には「やればできる」の経験がほとんどないってお話をしました。今回初めて、「やればできるじゃないか」という感じに、ちょっとなったんでしょうか。
佐藤 ちょっとはなったかもしれないですね。しかし、やっぱり経験不足が響いています。(第四章「言葉の時代、あぶない後半戦」より)


杣の天狗(滋賀)
純米吟醸生原酒うすにごり
180ml/410円
天満の隠れた名店である焼鳥「鳥仙」での二杯目。滋賀県産の山田錦(59%精米)を10号酵母で醸し、全国で数蔵しか残っていない木槽天秤搾りで搾った生原酒のうすにごり。澱はさほど目立たず見た目はほぼ清酒に近いが、飲むとしっかりとした旨味を感じる、かなり飲み応えのある濃厚な辛口である。肴は鶏刺し盛。
蔵元は1862年創業、琵琶湖の西岸・新旭町にある上原酒造。年間生産高が500石ほどの小さな蔵で、主銘柄は「不老泉」。
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