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大和蔵(宮城)

しぼりたて生酒
300ml/498円

大和蔵(たいわぐら)酒造は東北でも屈指の近代的設備を持つ酒蔵。前身となる蔵は寛政10年(1798)の創業で、平成8年に現在の宮城県黒川郡に移転し現在の称号となった。全国28都道府県に酒類・食料品小売チェーンを展開する「やまや」グループ傘下にあり、主銘柄は「雪の松島」。このしぼりたて生酒は流通時は銀紙で包装されており、飲み口はかなりフレッシュ。搾りたての米麹の風味がふわりと口中に広がり、喉越しは結構濃厚である。六甲道「やまや」で購入。
肴は旬のハマチ造り、たらもサラダ、イカ一夜干しの醤油マヨネーズ焼、焼鳥、トマトと鮭の茶漬。

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銀の匙

中勘助

ある晩私たちは肘かけ窓のところに並んで百日紅の葉ごしにさす月の光をあびながら歌をうたっていた。そのときなにげなく窓から垂れている自分の腕をみたところ、我ながら見とれるほどに美しく、透きとおるように蒼白く見えた。それはお月様のほんの一時のいたずらであったが、もしこれがほんとならば、と頼もしいような気がして 「こら。こんなに綺麗にみえる」
といってお恵ちゃんのまえへ腕をだした。
「まあ」
そういいながら恋人は袖をまくって
「あたしだって」
といって見せた。しなやかな腕が蝋石みたいにみえる。二人はそれを不思議がって二の腕から脛、脛から胸と、ひやひやする夜気に肌をさらしながら時のたつのも忘れて驚嘆をつづけていた。(前編四十八より)

ついひと月程前のことであろうか。全国有数の進学校である灘中に、教科書を使わず「銀の匙」の文庫本1冊だけを3年間熟読させ、生徒の国語力を飛躍的に伸ばした「伝説の国語教師」がいたとの記事を読んだ。「生涯心の糧となる様な教材で授業がしたい」というのがその元教諭・橋本武氏の想いだったそうだが、授業内容への興味もさる事ながら、かの文豪・夏目漱石が「文章が格別にきれいで細かい、文章に音楽的ともいうべき妙なる響きがある」と絶賛した「銀の匙」とは、一体どのような小説なのだろうかと無性に読んでみたくなった。
物語は大人になった「私」が、茶箪笥の引き出しから銀の小匙を見つけ、幼少の頃の思い出を回想する形で始まり、淡い恋心を抱いた友人の姉との別れで終わる、著者・中勘助の自伝風小説である。3年間には遥かに及ばないが、たっぷりと週末の2日間を費やして一語一語熟読した。100年近くも前に書かれたとは思えない、瑞々しい描写と季節感あふれる情景の連続である。見も知らぬ遥か昔の街並や自然が、幼なじみと遊んだ夕暮れ時の景色が、草花の匂いと共に眼前に立ち上ってくる様な気がした。声に出して読みたい衝動に駆られた文章など久々かも知れない。時を超えて読み継がれてほしい作品。

そこにはお手づくりの豆腐がふるえて、まっ白なはだに模様の藍がしみそうにみえる。姉様は柚子をおろしてくださる。浅い緑色の粉をほろほろとふりかけて、とろけそうなのを と とつゆにひたすと、濃い海老色がさっとかかる。それをそうっと舌にのせる。しずかな柚子の馨、きつい醤油の味、つめたく滑っこいはだざわりがする。それをころころと二三度ころがすうちにかすかな澱粉性の味をのこして溶けてしまう。他の皿にはませこけた小鯵が尻尾をならべてはねかえっている。ぜんごのあとが栗色に、背なかは青く、原野ほうはきらきらと光って、この魚に特有の温かい匂がする。よくしまった肉をもっさりとむしって汁にひたしてくえばこっとりした味が出る。(後編二十二より)

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