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戦後世界経済史

自由と平等の視点から
猪木武徳

現在、われわれが直面する難問の根底には必ず「価値」の選択問題がある。さまざまな価値のうち何を優先させるのか、それらにいかなる順序付けを与えるのかという問題である。社会科学でまず問題とすべきは、「自由」と「平等」という価値であり、この二つの価値の相克をどう解決するのかという問いかけである。本書の副題を「自由と平等の視点から」としたのも、そうした問題意識による。(「はしがき」より)

「2009年エコノミストが選ぶ経済書ベスト10」第一位、「週刊ダイヤモンド」の2009年「ベスト経済書」第二位、という書店の手書きPOPに惹かれて手に取った。堅い内容だが、文章が平易で読みやすい上に中身が濃い。
欧米諸国と日本の歩みを軸にしながらも、中国、東南アジア、インドと中央アジア、ロシアと東欧、中近東とアフリカ、中南米etc.…類書で省略されがちな国・地域まで含めた戦後経済史の歩みが、バランスよく、ツボを押さえた記述でまとめられている。また各国の経済史を挟む形で、冒頭に5つの視点(市場の浸透と公共部門の拡大/グローバリゼーションと米国の時代/所得分配の不平等/グローバルガヴァナンス/市場の「設計」と信頼)を提示し、結びで「機会の均等が進むとある時点で自由が侵蝕され始める」という「自由と平等の相克」について論じるなど、著者独自の問題意識もしっかりと主張。単なる教科書的な内容で終わらせない構成となっている。これほど中身の充実した新書を読んだのは久しぶり。

「平等化の進展は自由の侵食を生む」という問題は、人的資本の水準の低い国に起こる可能性が大きい。…(中略)…その意味では、人的資本の蓄積が不十分な(知徳の水準が不十分な)国でのデモクラシーは、「全体による全体の支配」を生み出しやすい。
この議論は、経済的に遅れた国だけを問題にしているのではない。先の暫定的な結論を拡張解釈すれば、日本のような経済の先進国でも、市民文化や国民の教育内容が劣化してゆけば、経済のパフォーマンス自体も瞬く間に貧弱になる危険性を示唆していると考えると、知育・徳育を中心とした教育問題こそがこれからの世界経済の最大の課題であることは否定すべくもない。(「むすびにかえて」より)

[2011年11月24日] この日の感想・書評へ→

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