白洲次郎 日本を復興させた男
須藤孝光
毎日、行動をともにすることで永山は、次郎が世間でいわれているような、剛腕にものをいわせて乱暴に事を進めるタイプでないことがよくわかってきた。
坐る椅子の数が決まっている以上、去ってもらわねばならぬ人が出る。そんなとき次郎は「そいつは辞めても食っていけるのか」と必ず訊いた。
浪花節かと思えば、自分には思いもつかないようなしゃれたセリフをさらりと言ってのける。若いころに世界を知ったからこそ、こうした人ができたのだろう。永山は自分に理解できないところで妙に納得した。(「ミイラになったミイラ取り」より)
「1946 白洲次郎と日本国憲法」に続くドキュメントノベル第2弾。時代背景的にも続編という位置づけで、日本の復興に果たした次郎の役割が活写されている。
まずは商工省の解体。1948年12月に貿易庁初代長官として就任するや、「白洲三百人力」と称された辣腕を振るい、電光石火の早業で汚職根絶等を成し遂げ商工省を改組。経済復興の原動力となる「通商産業省」を設立した。サンフランシスコ講和条約においては、調印前年の1950年に吉田茂の特使として訪米し、ロックフェラー三世やダレス国務長官らと会談して条約調印をお膳立て。調印当日には、吉田首相の演説草稿がGHQへの追従を並べたてた英文であることに激怒し、「晴れの日の原稿を、相手方と相談した上に相手側の言葉で書く馬鹿がどこにいるか!」と一喝。自ら骨子を書いて日本語に変更させた上、奄美群島、沖縄、小笠原諸島等の施政権返還を盛り込ませた。また日本の電力事業再編に際しては、東北電力会長として東京電力との水利権争いを制し、福島県・只見川流域の電源開発事業を推進した。こうした史実の舞台裏が、前作同様リアリティのある会話を挟みながら分かりやすく描かれている。
ディテールには虚実織り混ざった感もあるが、楽しみながら次郎の足跡を追うのに格好の一冊。3.11からの復興を目指す今の日本にこそ、こんな男がいてほしい。
「あのとき、じいさんがゲートのところで…」。
そうつぶやいたきり、次郎は言葉を詰まらせてしまった。顔を伏せている。三人には次郎が泣いているのがわかった。かすかに嗚咽さえ漏らしているようだ。
—白洲次郎も人前で泣くことがあるのか。
宮沢は意外の感に打たれた。(「アワ・フレンド・ジャパン!」より)


一(はじめ)(広島)
純米酒
720ml/1050円
酒器に注ぐと予想以上に濃い琥珀色。大正元年(1912)創業の賀茂泉酒造が、純米醸造酒の入門酒=「はじめの一本」との思いで名付けた「一(はじめ)」ではあるが、一見して通好みのたたずまいである。程良く熟成がきいたコクと膨らみのある味わいで、酸味のキレが良いせいか後味は意外とスッキリしている。常温でも美味しいが、ぬる燗・熱燗にするとより一層香りと旨味が引き立つ。広島八反を75%精米し酵母は901号を使用。北千住「食遊館」で購入。肴は刺身盛と握り鮨、手羽焼、焼シシャモ。
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