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9回裏無死1塁でバントはするな

野球解説は“ウソ”だらけ
鳥越規央

2006年から09年までを平均すると、先頭打者が単打で出塁したときの生還率は35.0%で、四死球で出塁したときは34.4%である。これを統計学的に調べてみると、P値が0.26%となり、特に有意な差があるとはいえない。
単純に、単年での数値を比較してみても、先頭打者が四死球で出塁したときの生還率が単打での出塁の生還率を越えた年は、4年の間に一度もない。
つまり、「四球での出塁は、単打で出塁させるよりも悪い」という言葉は、データから見れば、何の根拠もないことになる。(第2章「失点は誰の責任か」より)

統計学的手法によりプロ野球の解析を試みる「セイバーメトリクス(野球統計学)」の研究者が、野球界の様々なセオリーに疑問を呈示し、緻密なデータ分析に基づいて最適解に迫ろうと試みた野心的な書。タイトルにある「9回裏無死1塁でのバント」は勝率を上げるのか?を皮切りに、「左打者に左投手」は本当に有効か?「バッティングカウント」はあるか?「先頭打者に四死球」はヒットより“悪い”のか?2ストライク・ノーボールでは1球外すべきなのか?etc.、定石とされている作戦が細かく検証されている。「セイバーメトリクス」はあくまでチーム作りを任されたGM視点による、年間を通じて勝率を稼げるチームを編成するための方法論であり、個々の試合の勝負どころに持ち込む手法ではないと個人的には思っているが、野球というスポーツへの見方に柔軟性と広がりが生まれるのは間違いない。「野球人の錯覚」との併読がお勧め。
なお2007年の日本シリーズで賛否両論を巻き起こした、中日・落合監督による山井→岩瀬への投手交代についても取り上げているが、統計学的には落合監督の采配が正しかったと結論づけられているのが興味深い。

しかしながら、ノーアウトランナー1塁の状況でも、ノーアウト2塁の状況でも、さらにはどの点差においても犠牲バントを成功させることによって勝利確立を上げる効果はなかった。その減少率はプロ野球のそれとあまり変わらない。
特筆すべきは、9回裏ノーアウトランナー2塁での勝利確率が81.0%であったのに対して、1アウト3塁での勝利確率が80.3%でほぼ変化がなかったのである。(第4章「高校野球は『スポーツ』か?『教育』か?」より)

[2012年1月21日] この日の感想・書評へ→

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